教員紹介

Profile

西舘 崇
機構長 教授
西舘 崇
NISHITATE Takashi
共愛学園前橋国際大学国際社会学部教授。東京大学大学院新領域創成科学研究科国際協力学専攻博士課程修了。博士(国際協力学)。外務省広報文化交流部研究調査員、公益財団法人日本国際フォーラム主任研究員を経て、2016年4月に共愛学園前橋国際大学に着任。その後、同大准教授、弘前大学客員研究員、ヴィータウタス・マグヌス大学客員准教授などを経て2025年4月より現職。主要著書に『核開発地域に生きる–––下北半島からの問いかけ』(編著、同時代社、2024年)、『群馬で学ぶ多文化共生』(共著、上毛新聞社、2019年)、『国際政治の数理・計量分析入門』(分担執筆、東京大学出版会、2012年)など。

学生へメッセージ

大学の中だけでなく、大学の外で学ぶことの重要性を感じています。理由はいくつかありますが、僕はその中でも、机上の学問では気付き難い ‘生きた知’ に触れること、をあげたいと思います。生きた知とは、ある出来事のある瞬間を切り取った「記述された知」ではなく、動いていて、容易に捉え難く、また様々な人や出来事が重なり合った現実の中にある '知' です。教科書や歴史書の中に記された客観的な知識や事実はもちろん重要ですが、ここでいう生きた知はそれらとは別物です。

少し具体的にお話しましょう。僕がこのことに初めて気づいたのは、二十歳の時に訪れたフィリピンでした。マニラ郊外のある市場にて、清掃作業を行う初老の男性にインタビューをする機会がありました。彼の稼ぎは月2000円ほどと言うので、僕はとっさに「なぜもっと違う仕事を探さないのですか」とストレートに聞いてしまいました(今思うと、事情を知らないとはいえ随分と酷な質問だったと反省しています)。すると彼は、首にある傷を見せてくれながら、次のようなことを教えてくれました。

体が不自由でうまく動かせないことがある。この傷は、太平洋戦争中、フィリピンに上陸した日本軍に斬られたものなんだ。九死に一生を得たが、後遺症が残ってしまったんだよ。だからあまり高度なことができず、職もほとんどなくて、清掃作業をしているんだ。

この話を聞いて僕は大きな衝撃を受けました。教科書では、1945年に戦争は終わっています。しかし、彼にとっての戦争は「後遺症」として、今もなお続いているのです。現在の生活にも影響を与えているのです。現地を訪れ、彼にヒアリングできなければ、この気付きを得ることは難しかったのではないかと思います。このことをきっかけに、僕は本だけでなく、できる限り現場を訪れて、人に話を聞いたり、自分の目で状況を見たりすることを心がけるようになりました。

「生きた知」のあり方は、人それぞれで無数に発見できることだと思いますが、本学にはその入り口に皆さんを誘う、様々な授業があります。学外の現場に出て、自分と地域社会とを、さらには国際社会とをつなぐことを目指した「グローカル科目」群はその代表例といえます。

皆さんの大いなる学びを応援します。

研究内容について

専門は国際関係論、国際協力学ですが、学問の世界に足を踏み入れたそもそもの問題意識はより広く、漠然としたものでした。それは「協力っていったい何だろう」という疑問です。

「協力」という言葉は誰でも知っていますよね。でも、これを具体的かつ厳密に考えていくとどうでしょう。様々な疑問が湧いてきます。例えば、協力と一言でいっても、そこには人と人、人と社会、社会と社会、国と国などいろいろなアクターが関係していますよね。では、このそれぞれの場合で、協力が実現するためには何が必要でしょうか? 協力と対立を分かつものとは何でしょうか? そもそも何をもって「協力」とするのかも難しいですよね。

学部・大学院時代には主に、国と国との協力について考えてきました。研究テーマは、日本と韓国、米国の3カ国による安全保障分野での協力の条件です。先行研究では「利益」や「力」の重要性が指摘されています。けれども僕は、この3カ国はときに恋愛関係のような状態にあるのではないかと考え、「感情」や「過去へのこだわり」なども協力に影響する、と考えました。

本学では、協力に対する関心を持ち続けながらも、1)学生たちと地域で学び、活動できるテーマは何か、2)協力を手段とするなら、協力の先に何を目指すのか、といった問題意識から、私たちの身近な暮らしと「平和」をキーワードに教育・研究活動を行っています。近年では特に、外国にルーツを持つ人々との共生を扱ってきましたが、学生たちは自分なりに「平和」を定義しながら、地域の様々な課題に目を向けて研究しています。

例えば、西舘ゼミ生のこれまでの卒論テーマ例をみてみると、「ひきこもり高齢化問題に対して地域ができることは何か」「過疎地域における地域活性化に向けたエンパワーメント・アプローチの実践」「群馬県館林市に暮らすロヒンギャ民族を例に難民との共生を考える」などが挙げられます。

皆さんにとって「平和」とは何でしょうか。そしてそれを実現するためには何が必要でしょうか。一緒に考えていきましょう。

担当科目

国際協力実践演習 メディアの中のグローカル グローカル・シティズンシップ シティズンシップ演習 Glocal Seminar I・II 課題演習 I・II 卒業研究 Honors Project Honors Meeting Glocal Honors演習

所属する機構/コースの教員一覧

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