教員紹介

Profile

山手 昌樹
専任講師
山手 昌樹
YAMATE Masaki
上智大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程修了。博士(史学)。2023年4月より現職。専門はイタリア近現代史、ファシズム、ジェンダー史、イタリア鉄道史。共編著に土肥秀行・山手昌樹(編著)『教養のイタリア近現代史』(ミネルヴァ書房、2017年)、分担執筆に藤原辰史(編著)『歴史書の愉悦』(ナカニシヤ出版、2019年)、北村暁夫・田中ひかる(編著)『近代ヨーロッパと人の移動』(山川出版社、2020年)など。

学生へメッセージ

 私は、広島で生まれ育ち、大学進学をきっかけに上京しました。関東暮らしはそれなりに長くなったとはいえ、群馬に縁もゆかりもありません。本学で働き始める以前に群馬に足を踏み入れたことは数回程度だったでしょう。しかも、高崎でいつも信越本線に乗り換え碓氷峠へ向かってしまうので、前橋がどんな場所なのか机上の空論以上のものはありませんでした。
 風の強さは実際に体験すると壮絶でした。しかし、それだけに無風の日に感謝をするようになりました。人間万事塞翁が馬です。
 両毛線の利便性の悪さもさっそく体験しました。それに街の作り自体が自動車をベースに考えられているため、どこも駅周辺に何もなく、不便なうえに乗る理由がありません。みなさんのなかには通学に自動車を使っている人が多いことでしょう。ところが、脱炭素社会の実現に向け世界がさまざまな取り組みをおこなっているなか、自動車はまだまだ二酸化炭素を大量に吐き出しています。そうすると、自動車を使うことは世界的な目標に逆行していることになります。ここで私は自動車の利用を非難しているわけではありません。みなさんには、いま置かれている状況を当然視せず、授業で学習したことと結びつけて考えることを常に意識してもらいたいです。
 難しいことは偉い人や政治家が勝手にやってくれる。そう思っていませんか?不便な両毛線からいつの間にか世界的な課題へと話が移りました。しかも、これは単なる環境問題にとどまらず、都市計画や観光、商業活動など多くのテーマを実生活から考えることを意味しています。
 私は2年に一度、海外フィールドワークの授業でイタリアを訪れます。みなさんと一緒にイタリアでの体験を前橋発展のために活用できることを楽しみにしています。

研究内容について

 ファシズムとは何か?なぜ議会制民主主義が発展したヨーロッパでそれを真っ向から否定する思想が広まったのか?私はこうした問題意識を胸にイタリアの歴史をとりわけ民衆の行動に着目して研究しています。 
 ファシズムあるいはファシストという言葉を聞くと、独裁や暴力を思い浮かべることでしょう。実際、1922年にイタリアで成立したムッソリーニ政権は、選挙の廃止や反体制的政党・結社の解散、反体制運動の弾圧を通じて数年で一党独裁体制を確立し、1943年までそれを維持しました。そしてこの政治手法をさらに徹底させたヒトラーは、第二次世界大戦を引き起こし、ユダヤ人を大量に虐殺することになります。
 それでは独裁体制下の民衆は常に政府からの弾圧や監視に怯え、楽しみや笑いのない生活を送っていたのでしょうか?この問題を考えるヒントになるのが当時の映像です。そこには万遍の笑みで海水浴を楽しむ少年少女や観光を楽しむ大人の姿が頻繁に登場します。もちろん、こうした映像の多くが独裁体制自体が国内外に自政権の成果をアピールするために制作したプロパガンダ(政治宣伝)であることに注意する必要はあります。けれども、それ以前の時代においても、たとえば女性に参政権がなかったように、政治的権利や自由をもたなかった人は多くいましたし、余暇を楽しむことができるほどに生活に余裕のある人はごくわずかでした。そうした人たちがファシズム体制下でさまざまな物的利益を享受した事実は、単なるプロパガンダとして軽視すべきことではありません。
 経済的利益を前にして政治的信念を貫くことができる人はいったいどれだけいるでしょうか?このような問いを立てれば、先ほどの話が我々の現実世界に直結することがお分かりでしょう。私が専門とする歴史学は過ぎ去った出来事を分析対象にします。しかし、その分析で明らかになることは現在、そして未来に起こりうる問題を予測し、その解決策を考えるための手がかりにもなりうるのです。

担当科目

歴史学入門 ヨーロッパの歴史と文化 国際関係の歴史を知る 英語で読む国際問題 世界のフィールドワーク入門 政治学入門 海外フィールドワーク(イタリア) Global Studies Glocal SeminarⅠ・Ⅱ 基礎演習Ⅰ・Ⅱ 課題演習Ⅰ・Ⅱ 卒業研究

所属する機構/コースの教員一覧

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