教員紹介
専任講師
栗原 美紀
KURIHARA Miki
Profile
上智大学大学院総合人間科学研究科社会学専攻博士後期課程修了。博士(社会学)。上智大学アジア文化研究所特別研究員、総合人間科学部科研リサーチフェローを経て、2022年10月より現職。専門は社会学。主な業績に、「観光対象選択におけるSNSの役割:台湾・九份を事例として」(『年報社会学論集』29: 128-139)、「ヨガにおける身体的実践の意味:マレーシア・クアラルンプールでの指導実践を事例として」(『保健医療社会学論集』33(1): 46-55)など。
学生へメッセージ
私がこれまで研究を進める時には、一人間としていだく「なんで?」と「なんか気になる」という感覚を中心にしてきました。生きていれば日々、大小さまざまな疑問が浮かびます。それらは必ずしも自分の「研究テーマ」と直接的に関係しないかもしれません。研究と聞けば、まずやるべきことは明確な問題設定で、そこから計画を立て、着実に進行していく、というイメージがあるかもしれませんが、私はどうしても直感的に動いてしまうタイプで、その時の思いつきに従い、たくさん寄り道をしてきました。
私が学生時代にお世話になった先生方は、研究や学問を「旅」と表現していました。自分が日ごろ生活する場所から出かけていくことでは、それまで想像もしなかったような現実に多々直面することになり、おのずと今までの自分の考え方を振り返ったり、自分が予定していたことを本当にやっていいのか問いなおしたりしてしまいます。私自身、研究を始める前には自分中心の見方で物事を認識していましたが、色々な場所で多様な人と出会うことで、自分の誤りに気付くと同時に自分の存在を相対化するようになり、気がついたら、道なき道を行く、というような旅のプロセスを歩んでいました。そうした経験は、もちろん研究活動にも影響を与えていますが、普段の生活の中でも他者との接し方や自分の人生への考え方も大きく変えたと思います。
旅の中で大切なことは、物理的な遠くに行くということよりも、むしろ他者と出会うことだと考えています。人と関係を築くことで、自分一人では思いつかなかったような新たな道がひらけるためです。新たな出会いの機会は身近なところにもあって、大学はまさにたくさんの機会を秘める場です。私も学生のみなさんの多彩な出会いの中にあり、現代社会を生きるための多様な可能性を一緒に考えていく関係を築きたいと思っています。
研究内容について
これまで私は社会学を軸として、主に2つの研究を行ってきました。1つめは、人が観光する意味についてです。日常の中できれいな風景の写真や映像を見て、「ここに行ってみたい!」と思ったことがある人は少なくないと思います。私はそうした写真や映像に着目しながら、人がどのように旅行先を決めるのか、また、観光経験がその人の価値観にどのような影響を与えるのか、考えてきました。
2つめはヨガの思想と実践の関係です。今日の日本では、ヨガといえばエクササイズが先に思い浮かぶ人もいるかもしれませんが、一方で哲学でもあり、その思想は近代科学・医療への「オルタナティブ」としてとらえられることもあります。私がヨガの研究を始めた最初の動機は、ヨガを通して医療と宗教の関係を考えたかったからなのですが、調査地となったマレーシアでフィールドワークを続け、たくさんのヨガ指導者たちと出会う中で、ヨガを実践する人々のものの見方自体に惹かれるようになり、現在はヨガの指導者たちが現代世界をどのように理解しているのか、また、彼らのような考え方はどのようなプロセスで獲得されるのかを研究しています。
これら2つの研究内容は、一見何のつながりもないように思えるかもしれませんが、観光とヨガに共通するのは、それらが「日常生活」から一度離れて「異世界」を経験し、今までの自分自身を振り返りながら新たなものの見方を模索する契機を、人々に与えることです。自分の中にある「当たり前」の認識に気付き、異なる視点・考え方を獲得するプロセスを知ることは、現代社会に必要とされている多様性の受容を実践するために大切なことだと考えています。
担当科目
観光概論 / 地域と観光 / 多文化共生社会Ⅰ・Ⅱ / 社会学 / 海外フィールドワーク(マレーシア) / Glocal SeminarⅠ・Ⅱ / 基礎演習Ⅰ・Ⅱ / 課題演習Ⅰ・Ⅱ / 卒業研究