教員紹介

Profile

丹羽 充
コース長 准教授
丹羽 充
NIWA Mitsuru
国際コース専任講師。一橋大学大学院社会学研究科総合社会科学専攻博士後期課程修了。博士(社会学)。日本学術振興会特別研究員(PD)、東京大学大学院総合文化研究科特任研究員を経て、2022年4月より現職。専門は文化人類学、南アジア地域研究および宗教学。著書に『不信の支える信仰共同体――ネパールのプロテスタンティズムについての民族誌的研究』(単著、水声社)、論文に“The Problem of Unity and Representation among Protestants in Nepal”, Studies in Nepali History and Society 24(2), pp251-279などがある。

学生へメッセージ

問いを見つけて答えを練り上げるという作業を、公共的な営みとして実践すると「学問」になります。これまでの文化人類学の議論に中に問いを位置付け、文化人類学の方法や流儀に則って答えを練り上げようと試みるのであれば、文化人類学という学問をしているということになります。

ただし自分自身を振り返ってみると、学部在学中は、そもそも問いを見つけるのに苦労していたようです。その理由は、まずもって「知識」が足りていなかったからです(私自身、まだまだ勉強中です)。「問い」は、多くの場合「当たり前」からの逸脱として見つかります。たとえば、目の前に心を揺さぶる物事があったとしても「当たり前」との差分が見当たらなければ、当該現象について何を問えば良いというのでしょうか。そして知識は、比較対象としての「当たり前」を構成する要素(あるいは、「当たり前」の役割を引き受けてくれるもの)の中でも、もっとも主要なものの一つだといえます。だからまずは、さまざまな知識を身につけ、使いこなせるようになってください。

さまざまな知識を身につけ、使いこなせるようになることに加えて重要なのは、「当たり前」を疑う姿勢です(私自身、まだまだ訓練中です)。「当たり前」は、複雑な世界を素早く単純化して把握するためにたいへん有用ではありますが、しばしば先入観として私たちの視点や想像力を力強く束縛します。したがって「当たり前」からの逸脱に敏感であるためには、「当たり前」を疑う姿勢が、もっと言えば「当たり前」の中に(も)問いを見つけようとする姿勢がたいへん重要です。この姿勢も、大学生活の早い段階で身につけてください。

理屈っぽくて堅苦しい文章になってしまいました。ただし私は、たしかに理屈っぽいとは言われますが、決して堅苦しくはありません。教師として学生の役に立つことができればと考えていますので、気軽に声をかけてください。

研究内容について

修士課程ではアメリカ合衆国のキリスト教原理主義についての研究、博士後期課程ではネパール連邦民主共和国(以下、ネパール)のプロテスタンティズムについての研究、博士後期課程修了後はネパールにおける世俗主義とヒンドゥー・ナショナリズムについての研究に取り組んできました。今後は、日本(群馬県)に暮らすネパール人移民の研究にも着手したいと考えています。

私のこれまでの研究に(そしておそらくはこれからの研究にも)通底するのは、文化人類学的アプローチです。いわゆる「フィールドワーク」の語によって示されるその主たる特徴を私なりにまとめると、次のようになります。まず文化人類学は、フィールドワークで観察される具体に問いを見つけたり、具体に基づいて考える姿勢をとても大切にします。もちろんフィールドワークに先立って、問いを見つけたり仮説を練り上げたりする作業は重要です。しかし文化人類学者は、現場で観察される具体が、そうした問いや仮説を無効化していくことを(最初は戸惑いつつも、むしろ)楽しみます。次に文化人類学は、現場で観察される具体のみならず、その背後にある経緯や状況(少し難しい言葉で「文脈」と呼びます)を重視します。現場で観察される具体を「適切に」理解するためには「厚い」文脈を考慮に入れる必要がありますが、文化人類学のフィールドワークではこの作業を特に徹底して行います。

文化人類学というと、いわゆる「未開社会」を研究対象としているように思われるかもしれません。しかし文化人類学的アプローチは、私たち自身が暮らす社会を含めたさまざまな研究対象に適用することができますし、実際にそうした研究が増えています。

最後にフィールドワークの特徴として取り上げたいのは、それが貴重な出会いの場を提供してくれることです。私がネパールに足を踏み入れたのは、あくまで「フィールドワークのため」でした。しかし、予想だにしなかった視点から私の考えや価値観に揺さぶりをかけてくれたり喜びや悲しみを共有してくれたりする現地の友人との出会いは、私にとってかけがえのない経験であり続けています。

担当科目

文化人類学 国際移民論 アメリカの歴史と社会 国際関係の歴史を知る フィールドワークの方法 I・II 世界のフィールドワーク入門 Glocal Seminar I・II 基礎演習 I・II 課題演習 I・II 卒業研究

所属する機構/コースの教員一覧

このページの先頭へ戻る